子供の頃からのSF・ファンタジー好き。
早川から出ているカズオ・イシグロの「私を離さないで」は出版当初に読んだ。
主人公の語りとなんとなく不思議な生活感が終わりに向かって驚愕の事態へと。その押さえた語り口が、なお一層怖い。
読み終わって深く深く考えさせられる作品だった。
作者のルーツは長崎にある。被爆地に生きる長崎の人は広島と同じく様々な意味で差別されてきた。
このたびの震災で福島の人々が言われなき差別を受けることで、改めて広島・長崎の人々の痛みに気づかされた。
考えすぎかもしれないが、カズオ・イシグロの心象風景には核実験の対象とされた長崎の人々の痛みが刻まれていたのではないだろうか。
人として扱われないことの悲しみと痛みが胸に突き刺さる作品だった。